友達みんなが学校で楽しそうにしているなかで、ひとり心が晴れない毎日を過ごすのは、ほんと楽じゃないよね。
 夕暮れの学校帰り、通りすがりの家の団欒の声に、うちがこうだったらな、ああだったらなって、涙があふれてきたこともあったね。家にも学校にも、ほっとできるところがなくて、冬の寒い公園で一日を過ごしたこともあった。

 きみは、そんな自分の淋しさやつらさを向こうに追いやって、おかあさんのこと、おとうさんのこと、小さな弟や妹のことを気遣ってあげて、毎日毎日がんばってきた。でも、そんなあなたの想いに、おかあさんやおとうさんは、気づかなかったり、応えられなかったりもしたね。逆に、ちょっとしたことでいっぱい怒られたりして、もっとつらくなっちゃったり、追いつめられちゃったりもした。きみはそれで自分のことをダメだって思っちゃったりもする。

 あのね、おかあさん、おとうさんにもいろいろ難しい事情があって、それで苦しい毎日を送っていると、自分たちのことで精いっぱいで、かけがえのないきみを可愛いって思ったり、大事にしたりできなくなっちゃう。特にきみが小さいときにそんな事情が重なると、きみの背負う荷物が、そうでない人たちよりも重くなっちゃうことがあるんだ。

 よく、人はみんな誰もが苦労してるって言うけど、その重さは、おかあさんやおとうさんから大切に育てられた人とはやっぱり違う。

 それから、学校でもいろいろがんばってるのに、周りの友達とかとなんだかうまくいかなくなっちゃってることはないかい?

 おかあさん、おとうさんにあんまり甘えられなかったり、逆にしっかりしなさいって言われていたりすると、その分、よけいに人からほめられたい、認められたい、誰かから優しくされたいって思うよね。
 だけど、子どもの頃は、明るく元気な友だちを中心にみんなの輪が作られ、そんな子が先生からも評価されほめられるのが普通。だからきみは、そんな子をすごくうらやましく思ったり、強くがんばっちゃったり、すねちゃったり、なんだか嫌になっちゃったり、憎らしく思っちゃったりしてるかもしれない。ときに、悪口や陰口を言って孤立しちゃったり、いじめられちゃったりしてるかもしれない。
 そんなふうに、ほんとはみんなに好かれたい、ほめられたい、仲良くやりたいっていうきみの気持ちとは反対の状況になっちゃったりすることも多いんだ。おうちのことで、たくさん淋しい想いをしているのに、学校でもひとりぼっちになっちゃったら本当に悲しくてつらいことだね。

 でもね、それはきみのせいじゃない。優しくされたい、好かれたい、みんなで仲良く過ごしたいって願っているきみが、家でも学校でも、きみのできる精いっぱいのやり方でやってるんだからそれでいい。今はうまくいかないけどそれでいい。そんな自分のことを引け目に思わなくていい。

 それから、これも覚えておいて。

 困って苦しんでいる人を見過ごせないっていう人は結構いる。きみの優しさと気遣いとがんばりをわかってくれて、応援してくれる人はどこかに必ずいる。養護の先生や相談の先生かもしれないし、給食のおばちゃんかもしれない。いとこのおねえさんや親戚のおばちゃんかもしれないし、公園を散歩しているおじいちゃんかもしれない。
 だから、頼れそうな人を見つけて、話しかけてみてもいい。人間は神さまじゃないから全部は頼れなくても、きみが少しでもほっとしたりすれば、もうけものだ。

 もし、そんな人が見つからないとか、いないって思うなら、それはそれで大丈夫。そういうきみにはそもそも地力がある。そして、誰かのかわりに、犬や猫や、夜空の月や星や、樹木や草花に支えられ、生きる苦しみを癒されている人もいっぱいいる。

 それと、自分の好きなこと心ひかれることを、とにかく続けるんだ。

 そのことを想うと、それをやると、なんだかワクワクしたり、沈んだ気持ちがちょっと忘れられるようなものだととてもいい。恥ずかしくて人に言えないことでも何でもかまわない。
 人がどう思ったって、誰も自分に代わって生きてはくれないし、幸せになるのは自分。
 そして、そのことに関係する言葉をたくさん集めるんだ。それが自分の居場所を作ってくれ、自分を守ってくれ、自分の世界を作ってくれる。

 それから、祈ろう。「神さま、私を見守ってください」って。
 でも、それだけじゃ、きみの持つ素敵な力が十分生かされないことがある。ちょっと気持ちに余裕があるときには、「神さま、私を見守ってくださってありがとう」ってお礼を言うんだ。  
 もし、神さまがイメージできなかったら、近くの公園などの大きな木を一本見つけて、それに祈ろう。夜空のお月さまやお星さまでもいい。祈りは通じる。

 いいかい、きみは苦しむために生まれてきたんじゃないんだ。楽しいとか、嬉しいとか、素敵だなとかっていう気持ちをいっぱい感じるために生まれてきたんだ。
 とにかく、今はそう思えないかもしれないけど、「この世に生まれてきてよかった」ってふと思うような時間を少しずつ集めていくんだ。

 自分の心ひかれることを大事にして、そんな小さな時間を集めていると、ほかでもない自分ならではの幸せの道に開かれる。きみが幸せになるって決めれば、必ずそうなる。それは大勢の人が描く幸せのかたちとはとは、おそらく違うものだ。
 きみがいったんその道を歩み出すと、苦しいことや淋しいことが多かったこれまでの日々が、今度は光となってきみの豊かな幸せを輝かせてくれる。

 きみの幸せと安らぎを心から祈ります。

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